終活の1歩目として「エンディングノート」を書き始める人が増えています。
エンディングノートは、万が一のときに備えて、自分の想いや希望、重要な情報をまとめておくノートです。
遺言書のような法的効力はありませんが、医療や介護の希望、財産や連絡先の記録、葬儀やお墓の意向など、残された人たちの負担を減らす大きな助けとなります。
このページでは、エンディングノートに記入すべき項目やポイント、準備のタイミングなどを分かりやすく解説します。
エンディングノートの選び方

エンディングノートは主に4つの方法から選ぶことになりますが、最もおすすめなのは「市販のエンディングノートを使う」です。
それぞれの特徴や、メリット・デメリットを考慮して、自分に合ったエンディングノートを選びましょう。
1.市販のエンディングノートを使う
エンディングノートを書く人が増えているため、書店や文房具店、ネット通販、100円均一など、身近な場所で様々なタイプのエンディングノートが販売されています。
普通のノートよりも価格が高い場合が多いですが、書くべき項目が整理されているため、初めてでも必要な情報を抜け漏れなく記入できるというメリットがあります。
2.普通のノートを使う
エンディングノートのように項目が用意されていないため、形式にとらわれず、自分が書きたいことを自由に記入することができます。
ただし、何を書くべきか迷いやすく、大切な情報の抜け漏れや、内容が散漫になりやすいというデメリットがあります。
3.無料配布されているテンプレートを使う
法務局や市区町村でエンディングノートのテンプレートが無料公開されています。
費用がかからず始めやすいというメリットがありますが、デジタルデータをダウンロードして印刷する手間や、デザインがシンプルで書く楽しみが少ないというデメリットがあります。
4.スマホアプリを使う
エンディングノートのスマホアプリなど、スマホやPCから作成する方法も増えています。
入力や保存、編集が簡単というメリットがありますが、データの紛失やセキュリティ面でのリスクなどのデメリットがあります。
また、デジタルデータは万が一のときに家族が見つけられない可能性があるため注意が必要です。
エンディングノートに記入すべき項目
1.人生の振り返り

終活は、これまでの自分を振り返り、これから先の自分をイメージすることから始めます。
まず、生まれてから現在までの出来事や、大切にしてきたこと、忘れられない体験などを自由に書いていきます。
家族や大切な人が読んだときに、あなたらしさが伝わる内容にしましょう。
そして次は、これからの人生をどのように過ごしたいか、何を実現したいかなど、自分のやりたかったことや好きなことを書きます。
晩年をどこで誰と過ごしたいか、最期を迎えるときに誰と会いたいかなど、これから先の人生を具体的にイメージしましょう。
また、この項目では、名前や生年月日、住所などの基本情報も記入しておきます。
記入例
- 基本情報:名前、生年月日、住所、本籍、電話番号、勤務先、健康保険証の番号など
- 思い出:年代ごとのエピソード、大切にしてきたこと、お世話になった人など
- 将来:やりたいことリスト、会いたい人リスト、行ってみたい場所リストなど
2.家族・親族

家族や親族に関する情報を記入しておくことで、万が一のときの連絡がスムーズになります。
また、入院や手術の同意、相続手続きなど、人生の重要な場面では親族に対応してもらうことが多くなります。
そのため、自分と親族との関係を把握しておくことは非常に重要で、親族関係を確認する方法としておすすめなのが「家系図」です。
家系図を作成することで、自身の親族関係を明確に把握でき、医療や相続の場面で誰がどのような立場にあるかをスムーズに確認できます。
また、もしペットを飼っている場合は、あらかじめ自分に代わってペットの面倒を見てくれる、信頼できる人や団体を探しておきましょう。
記入例
- 家族一覧:名前、続柄、生年月日、住所、電話番号など
- 親族一覧:名前、間柄、住所、電話番号、連絡してほしいタイミングなど
- 家系図
- 慶弔記録:慶事(結婚、出産、入学など)、弔事(葬儀、法要、香典の相場など)
- 家族メモ、親族メモ
- ペットについて:名前、生年月日、健康状態、食事の好み、動物病院、ペット保険、もしものときの希望など
3.友人・知人

家族や親族の情報の他に、友人や知人に関する情報も記入します。
家族が把握していない関係も多いため、連絡が必要な人を記入しておくことで、万が一のときの連絡がスムーズになります。
また、頼れる家族や親族がいない場合、頼りになるのは長年の友人や親しい知人であることも少なくありません。
それ以外にも、友人や知人のリストを作成することで、過去を振り返り、久しぶりに会ってみたい人を思い出すきっかけにもなります。
記入例
- 友人知人一覧:名前、本人との関係、住所、電話番号、連絡してほしいタイミングなど
- その他の連絡先一覧
- 慶弔記録:慶事(結婚、出産、入学など)、弔事(葬儀、法要、香典の相場など)
- 友人知人メモ
4.財産

財産を把握してリストを作っておくことは、万が一のときに財産を引き継ぐためだけでなく、人生後半期の生活を考えるうえでも重要になります。
まず、最初におこないたいのが預貯金の整理で、金融機関や預貯金の種類などをリスト化します。
その際、長年使っていない不要な口座は解約することをおすすめします。
もし、家族や親族が解約しなければならなくなった場合、委任状や代理人手続き、相続手続きなどが必要になるので、家族の手間を減らすためにも口座の数は必要最小限にしておきましょう。
株式や投資信託などの金融財産を保有していて、さらにネット証券を利用している場合は、全てがオンライン上で完結するため、家族が存在に気づかない恐れがあります。
証券会社や連絡先、保有財産の概要などを記入し、加えて相続の際に困らないよう、証券会社での手続きの流れも記入しておくと安心です。
保険や年金についても財産の項目に記入しておきます。
また、プラスの財産だけでなく、借金や未払いローン、保証人の契約など、マイナスの財産についても整理しておく必要があります。
借金は相続対象になるため、家族が知らずに引き継いでしまうリスクがあります。
負債の内容、金額、借入先、返済状況などを詳細に書き残しておくことで、残された人が適切な判断をしやすくなります。
プラスの財産もマイナスの財産も時間の経過とともに状況が変化していくので、財産リストは作成して終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。
また、パスワードや暗証番号はエンディングノートに記入せず、別紙で保管し、家族に保管場所を伝えておきましょう。
記入例
- 預貯金:金融機関名、支店名、種類、口座番号、名義人など
- 口座自動引落:項目、金融機関、口座番号、引落日など
- 有価証券、その他の金融資産:証券会社名、口座番号、名義人など
- 不動産:種類、名義人、所在地、地番、登記簿記入内容など
- その他の資産
- 借入金、ローン:借入先、連絡先、借入額、返済方法、借入残高など
- クレジットカード、電子マネー:金融機関、クレジットブランド、カード番号、紛失時の連絡先など
- 保険:保険会社名、保険内容、請求するタイミング、契約者名、保険金受取人、証券番号、期間、保険料、連絡先など
- 年金:公的年金(基礎年金番号、年金の種類など)、私的年金(名称、連絡先など)
5.医療・介護

医療や介護に対する希望を記入しておくと、万が一のときに家族や親族が判断しやすくなります。
高齢期になると、初診や入院、手術の際に、病歴や手術歴などの詳細な情報が求められるため、健康状態や服薬記録、病歴や手術歴、持病やアレルギーなどを記入しておくと役に立ちます。
また、高齢期ではかかりつけ医やかかりつけ薬局を見つけておくことが重要で、かかりつけの病院や薬局の名称や連絡先も記入しておきましょう。
それ以外にも、延命治療を望むかどうか、自宅療養か施設かの希望、認知症になった場合の対応などを記入しておくと、家族や大切な人に難しい判断をさせなくて済みます。
記入例
- 健康管理:健康状態、服薬記録、持病、アレルギー、病歴、かかりつけ医など
- 告知、延命治療:告知についての希望、延命治療についての希望、臓器提供や献体についての希望など
- 介護:介護についての希望、介護のための費用について、介護や財産管理をお願いしたい人など
6.葬儀

親や親族の葬儀で苦労や後悔をした経験から、自分の葬儀は自分で準備しておきたいと考える人が増えています。
葬儀に対する後悔の多くは、葬儀社の比較や費用の検討をおこなわず、言われるままに決めてしまうことに起因します。
こうした失敗を避けるため、元気なうちに葬儀の事前相談や生前契約を結んでおくケースが増えており、葬儀の事前準備をしている場合は内容を記入しておきましょう。
また、事前に準備をしていなかったとしても、葬儀の希望を記入しておくだけで家族や親族の負担が軽減します。
記入例
- 葬儀の実施について
- 葬儀の宗教について
- 葬儀の業者や会場:生前予約の内容など
- 葬儀の費用について
- 喪主になってほしい人
7.お墓

先祖代々のお墓や、すでに購入しているお墓がある場合は、場所や連絡先などの詳細な情報を記入します。
お墓を新しく建てる場合は、お墓を管理する承継者が必要になるため、事前に相談しておきましょう。
また、最近では供養の形も多様化していて、お墓以外にも散骨や納骨堂、樹木葬などの選択肢があります。
お墓についての考えや希望を明確化して記入しましょう。
記入例
- 希望するお墓
- お墓の詳細情報:名称、連絡先、所在地、墓地使用権者など
- お墓や供養の費用
8.相続・遺言

相続はトラブルや揉め事になるケースが多いため、事前準備をしておくことは終活の大きな目標の一つです。
エンディングノートに法的効力はありませんが、相続に対する想いや分配の方針などを記入しておくことで、残された人たちの理解が深まり、争いを未然に防ぐ効果が期待できます。
相続では、「誰が・どの財産を・どのような割合で」引き継ぐかを明確にすることが大切です。
また、遺言書を作成している場合は、保管場所や遺言書の種類を記入しましょう。
記入例
- 遺言書:有無、保管場所、最新の遺言書を作成した日、遺言執行者など
- 遺産分割について
- 相続に関する希望
9.身じまいリスト

最近ではスマホやPCからWebサービスを利用することが多く、契約やアカウント情報を整理せずに放置しておくと、万が一のときに家族がその存在や解約方法を把握できずに困ることになります。
スマホやPCのログイン情報や利用中のWebサービス、サブスク契約の一覧などを記入しておくことで、残された人がスムーズに対応できるようになります。
記入例
- スマホ、PC:ログイン情報の保管場所、処分方法など
- Webサービス:利用中サービス一覧、ログイン情報の保管場所など
- コレクション:保管場所、管理方法、処分方法など
10.その他

最後に、形式にとらわれず、自由に記入できる項目を用意します。
家族や友人へのメッセージや感謝の言葉、思い出の写真を残すなど、自分の想いを自由に伝えましょう。
記入例
- 大切な人へのメッセージ
- 写真について
エンディングノートのポイント

書けるところから始める
最初から完璧を目指し、全部を書こうと気負うと、取り掛かるのが億劫になったり、なかなか書き進められなかったりします。
まずは、自分の基本情報や家族情報など、すぐに書けるところから始めましょう。
更新を前提に考える
現在と将来の情報は時間と共に変化するため、エンディングノートは一度書いたら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。
年に1回、自分の誕生日や年末年始など、定期的に見直すタイミングを作りましょう。
悪口は書かない
エンディングノートの内容は、読んだ人の心に重くのしかかるため、悪口や恨みごとは書かないようにしましょう。
エンディングノートの保管方法
エンディングノートの内容は重要な個人情報なので、誰かに悪用されないように注意して管理する必要があります。
ただし、エンディングノートは見つけてもらえなければ意味がないため、見つけにくいデジタルデータや、見つけるのに時間がかかる貸金庫などは避けた方が無難です。
すぐに探し出せる場所に保管し、信頼できる人にエンディングノートの存在と保管場所を伝えておきましょう。
まとめ
エンディングノートを書くことは、単なる準備作業ではありません。
これまでの人生で、どんな経験をして、誰と過ごし、何を大切にしてきたのか。
自分の人生を見つめ直し、これから先、どう生きるかを考える機会でもあります。
そして同時に、医療・介護・葬儀・相続・資産など多岐にわたる内容を記入することで、万が一のときに家族や残された人の負担を軽減することができます。
エンディングノートに記入する内容は多いですが、焦らず書けるところから少しずつ始めましょう。
その積み重ねが、あなたとあなたの大切な人の未来を、穏やかで安心できるものに変えてくれます。
