「終活」とは、人生の最期を意識しながら、これからの時間を前向きに、自分らしく生きるための準備をおこなうことです。

人生をより良いものにするために、多くの人が終活に取り組んでいます。

しかし、いざ終活を始めようと思っても、「何をやればいいのか分からない」という方も少なくありません。

そんなときに役立つのが、終活に必要な項目を整理した「やることリスト」です。

老後のマネープランや財産の管理、医療や介護の意思表示、葬儀やお墓の準備など、終活には多くの項目があります。

このページでは、終活の1歩目を踏み出せるように、終活のやり方・始め方を分かりやすく解説します。

エンディングノートの活用

終活は「エンディングノート」への記入を軸に進めていきます。

エンディングノートは、万が一のときに備えて、自分の想いや希望、重要な情報をまとめておくノートです。

エンディングノートの項目を埋めていくと、財産の管理や相続、医療や介護、葬儀やお墓など、考えておくべきことや準備しておくべきことが見えてきます。

終活のやることリスト

1.人生の振り返り

「人生の振り返り」の画像

終活は、これまでの自分を振り返り、これから先の自分をイメージすることから始めます。

まず、生まれてから現在までの出来事や、大切にしてきたこと、忘れられない体験などを振り返り、エンディングノートに記入します。

家族や大切な人が読んだときに、あなたらしさが伝わる内容にしましょう。

そして次は、これからの人生をどのように過ごしたいか、何を実現したいかなど、自分のやりたかったことや好きなことを考えます。

晩年をどこで誰と過ごしたいか、最期を迎えるときに誰と会いたいかなど、これから先の人生を具体的にイメージしましょう。

また、名前や生年月日、住所などの基本情報もエンディングノートに記入します。

エンディングノートの記入例

  • 基本情報:名前、生年月日、住所、本籍、電話番号、勤務先、健康保険証の番号など
  • 思い出:年代ごとのエピソード、大切にしてきたこと、お世話になった人など
  • 将来:やりたいことリスト、会いたい人リスト、行ってみたい場所リストなど

2.人間関係

「人間関係」の画像

家族や親族に関する情報を整理し、エンディングノートに記入しておくことで、万が一のときの連絡がスムーズになります。

また、入院や手術の同意、相続手続きなど、人生の重要な場面では親族に対応してもらうことが多くなります。

そのため、自分と親族との関係を把握しておくことは非常に重要で、親族関係を確認する方法としておすすめなのが「家系図」です。

家系図を作成することで、自身の親族関係を明確に把握でき、医療や相続の場面で誰がどのような立場にあるかをスムーズに確認できます。

家族や親族の情報の他に、友人や知人に関する情報も記入しておきます。

家族が把握していない関係も多いため、連絡が必要な人を記入しておくことで、万が一のときの連絡がスムーズになります。

また、友人や知人のリストを作成することで、過去を振り返り、久しぶりに会ってみたい人を思い出すきっかけにもなります。

もし、ペットを飼っている場合は、あらかじめ自分に代わってペットの面倒を見てくれる、信頼できる人や団体を探しておきましょう。

エンディングノートの記入例

  • 家族一覧:名前、続柄、生年月日、住所、電話番号など
  • 親族一覧:名前、間柄、住所、電話番号、連絡してほしいタイミングなど
  • 家系図
  • 友人知人一覧:名前、本人との関係、住所、電話番号、連絡してほしいタイミングなど
  • その他の連絡先一覧
  • 慶弔記録:慶事(結婚、出産、入学など)、弔事(葬儀、法要、香典の相場など)
  • ペットについて:名前、生年月日、健康状態、食事の好み、動物病院、ペット保険、もしものときの希望など

3.財産

「財産」の画像

財産を把握してリストを作っておくことは、万が一のときに財産を引き継ぐためだけでなく、人生後半期の生活を考えるうえでも重要になります。

まず、最初におこないたいのが預貯金の整理で、金融機関や預貯金の種類などをリスト化し、エンディングノートに記入します。

その際、長年使っていない不要な口座は解約することをおすすめします。

もし、家族や親族が解約しなければならなくなった場合、委任状や代理人手続き、相続手続きなどが必要になるので、家族の手間を減らすためにも口座の数は必要最小限にしておきましょう。

株式や投資信託などの金融財産を保有していて、さらにネット証券を利用している場合は、全てがオンライン上で完結するため、家族が存在に気づかない恐れがあります。

証券会社や連絡先、保有財産の概要などをエンディングノートに記入し、加えて相続の際に困らないよう、証券会社での手続きの流れも記入しておくと安心です。

また、プラスの財産だけでなく、借金や未払いローン、保証人の契約など、マイナスの財産についても整理しておく必要があります。

借金は相続対象になるため、家族が知らずに引き継いでしまうリスクがあります。

負債の内容、金額、借入先、返済状況などを詳細に書き残しておくことで、残された人が適切な判断をしやすくなります。

プラスの財産もマイナスの財産も時間の経過とともに状況が変化していくので、財産リストは作成して終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。

また、パスワードや暗証番号はエンディングノートに記入せず、別紙で保管し、家族に保管場所を伝えておきましょう。

エンディングノートの記入例

  • 預貯金:金融機関名、支店名、種類、口座番号、名義人など
  • 口座自動引落:項目、金融機関、口座番号、引落日など
  • 有価証券、その他の金融資産:証券会社名、口座番号、名義人など
  • その他の資産
  • 借入金、ローン:借入先、連絡先、借入額、返済方法、借入残高など
  • クレジットカード、電子マネー:金融機関、クレジットブランド、カード番号、紛失時の連絡先など

4.マネープラン

「マネープラン」の画像

終活ではこれから先の人生のために、お金について考えておく必要があります。

まず「収入(高齢期にどんな収入があるか)」「支出(生活費はどれくらい必要か)」「財産(預貯金や財産はどれくらいあるか)」を調べます。

仕事を退職した後は年金が収入の柱となるため、将来受け取ることのできる年金額を「ねんきん定期便」などで確認します。

企業年金や個人年金、配偶者の年金なども、忘れずに確認しましょう。

そして、退職後の生活費を予想します。

高齢期の平均的な月々の生活費は、一人暮らしの人で約16万円、夫婦では約27万円となっているので、2~3ヶ月ほど家計簿をつけて平均より多いか少ないかを確認しましょう。

高齢期の収入と支出が予想できたら、それぞれの1年間の合計額を計算し、不足が発生するようなら、貯蓄の取り崩し、支出内容や家賃の見直しなどの対策を検討します。

高齢期のマネープランでは、普通の生活でお金が尽きないようにすることが大切です。

考えること

  • 高齢期の収入について
  • 支出(生活費)について
  • 生活費の見直し

5.住まい

「住まい」の画像

高齢期の住まいについて考えるのも終活の一つです。

住まいは「年齢を重ねても今の家で安全に住み続けられるか」「建替え・買換えなど住み替えを選択した方がいいか」を軸に考えます。

今の家に住み続ける場合は、転倒リスクを下げる手すりや段差解消など必要最低限のバリアフリーから始め、状況に応じて段階的にリフォームを重ねるのが現実的です。

高齢者や要介護認定などの一定の条件を満たしていれば、リフォームの際に介護保険や助成金制度を利用できます。

今の家が生活スタイルには合わない、部分的なリフォームでは対応できない場合は、建替えや買換えなどの住み替えを検討します。

住み替えには大きなお金が必要になるので、将来の生活資金が足りるかどうかを考えながら、資金計画を立ててみましょう。

高齢期の住み替えでは、子世帯との同居を視野に入れた二世帯住宅の検討や、自宅に住み続けるのが難しくなった場合に備えて「売りやすい家」「貸しやすい家」を選ぶ必要があります。

また、終活では増え過ぎた持ち物を減らしていくことも重要です。

考えること

  • 高齢期の住まいについて
  • 住み替えの資金計画
  • 身の回りのものの整理

6.保険

「保険」の画像

どのような保険に加入しているかを確認し、エンディングノートに内容を記入します。

加入している保険の内容は、「保険証券」や「契約のお知らせ」などで確認できます。

保険金や給付金などは税金の対象となりますが、契約によっては非課税になる場合もあり、さらに受取人によって税金の種類が異なるため、保険の内容が現在の自分に合っているか見直しもおこないましょう。

また、保険と一緒に年金についても記入しておきます。

エンディングノートの記入例

  • 保険:保険会社名、保険内容、請求するタイミング、契約者名、保険金受取人、証券番号、期間、保険料、連絡先など
  • 年金:公的年金(基礎年金番号、年金の種類など)、私的年金(名称、連絡先など)

考えること

  • 保険内容の見直し

7.医療・介護

「医療・介護」の画像

高齢期になると、初診や入院、手術の際に、病歴や手術歴などの詳細な情報が求められるため、健康状態や服薬記録、病歴や手術歴、持病やアレルギーなどを整理し、エンディングノートに記入しておくと役に立ちます。

高齢期ではかかりつけ医やかかりつけ薬局を見つけておくことも重要で、かかりつけの病院や薬局の名称や連絡先も記入しておきましょう。

また、医療や介護に対する希望を記入しておくと、万が一のときに家族や親族が判断しやすくなります。

延命治療を望むかどうか、自宅療養か施設かの希望、認知症になった場合の対応などを記入しておくと、家族や大切な人に難しい判断をさせなくて済みます。

エンディングノートの記入例

  • 健康管理:健康状態、服薬記録、持病、アレルギー、病歴、かかりつけ医など
  • 告知、延命治療:告知についての希望、延命治療についての希望、臓器提供や献体についての希望など
  • 介護:介護についての希望、介護のための費用について、介護や財産管理をお願いしたい人など

8.葬儀

「葬儀」の画像

親や親族の葬儀で苦労や後悔をした経験から、自分の葬儀は自分で準備しておきたいと考える人が増えています。

葬儀に対する後悔の多くは、葬儀社の比較や費用の検討をおこなわず、言われるままに決めてしまうことに起因します。

こうした失敗を避けるため、元気なうちに葬儀の事前相談や生前契約を結んでおくケースが増えており、葬儀の事前準備をしている場合はエンディングノートに内容を記入しておきましょう。

また、事前に準備をしていなかったとしても、葬儀の希望を記入しておくだけで家族や親族の負担が軽減します。

エンディングノートの記入例

  • 葬儀の実施について
  • 葬儀の宗教について
  • 葬儀の業者や会場:生前予約の内容など
  • 葬儀の費用について
  • 喪主になってほしい人

9.お墓

「お墓」の画像

先祖代々のお墓や、すでに購入しているお墓がある場合は、場所や連絡先などの詳細な情報をエンディングノートに記入します。

お墓を新しく建てる場合は、お墓を管理する承継者が必要になるため、事前に相談しておきましょう。

また、最近では供養の形も多様化していて、お墓以外にも散骨や納骨堂、樹木葬などの選択肢があります。

お墓についての考えや希望を明確化して記入しておきましょう。

エンディングノートの記入例

  • 希望するお墓
  • お墓の詳細情報:名称、連絡先、所在地、墓地使用権者など
  • お墓や供養の費用

10.相続

「相続」の画像

相続はトラブルや揉め事になるケースが多いため、事前準備をしておくことは終活の大きな目標の一つです。

相続では「誰が・どの財産を・どのような割合で」引き継ぐかを明確にしましょう。

相続人と相続財産を把握したら、必要な相続対策をおこないます。

相続の希望を実現するには遺言書を残すことが有効で、それに加えてエンディングノートに遺言書の種類や保管場所、分け方の理由、感謝の言葉を記入しておきましょう。

考えること

  • 遺言者の作成
  • 相続対策:相続税、生前贈与など

エンディングノートの記入例

  • 遺言書:有無、保管場所、最新の遺言書を作成した日、遺言執行者など
  • 遺産分割について
  • 相続に関する希望

11.身じまいリスト

「身じまいリスト」の画像

最近ではスマホやPCからWebサービスを利用することが多く、契約やアカウント情報を整理せずに放置しておくと、万が一のときに家族がその存在や解約方法を把握できずに困ることになります。

スマホやPCのログイン情報や利用中のWebサービス、サブスク契約の一覧などをエンディングノートに記入しておくことで、残された人がスムーズに対応できるようになります。

エンディングノートの記入例

  • スマホ、PC:ログイン情報の保管場所、処分方法など
  • Webサービス:利用中サービス一覧、ログイン情報の保管場所など
  • コレクション:保管場所、管理方法、処分方法など

12.その他

「その他」の画像

エンディングノートに家族や友人へのメッセージや感謝の言葉を記入したり、思い出の写真を残したり、自分の想いを自由に伝えましょう。

エンディングノートの記入例

  • 大切な人へのメッセージ
  • 写真について

終活のポイント

「終活のポイント」の画像

取り掛かれるところから始める

最初から完璧を目指すと、取り掛かるのが億劫になったり、なかなか終活を始められなかったりします。

まずはエンディングノートを用意し、自分の基本情報や家族情報など、すぐに記入できるところから始めましょう。

更新を前提に考える

現在と将来の情報は時間と共に変化するため、エンディングノートは一度書いたら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。

年に1回、自分の誕生日や年末年始など、定期的に見直すタイミングを作りましょう。

悪口は書かない

エンディングノートの内容は、読んだ人の心に重くのしかかるため、悪口や恨みごとは書かないようにしましょう。

エンディングノートの保管方法

エンディングノートの内容は重要な個人情報なので、誰かに悪用されないように注意して管理する必要があります。

ただし、エンディングノートは見つけてもらえなければ意味がないため、見つけにくいデジタルデータや、見つけるのに時間がかかる貸金庫などは避けた方が無難です。

すぐに探し出せる場所に保管し、信頼できる人にエンディングノートの存在と保管場所を伝えておきましょう。

まとめ

終活はただ終わりに備える作業ではありません。

これまでの人生で、どんな経験をして、誰と過ごし、何を大切にしてきたのか。

自分の人生を見つめ直し、これから先、どう生きるかを考える機会でもあります。

そして同時に、医療・介護・葬儀・相続・資産など多岐にわたる内容を準備することで、万が一のときに家族や残された人の負担を軽減することができます。

終活で考えたり用意したりする項目は多いですが、焦らず取り組めるところから少しずつ始めましょう。

その積み重ねが、あなたとあなたの大切な人の未来を、穏やかで安心できるものに変えてくれます。